EurekaMoments

ロボットや自動車の自律移動に関する知識や技術、プログラミング、ソフトウェア開発について勉強したことをメモするブログ

状態空間モデルから伝達関数モデルへの変換の基礎とPythonプログラム

目次

背景・目的

今までに書いてきたこれらの記事では、
ロボットの制御モデルを状態空間モデル
という形式で表現していましたが、

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もう一つの形式として伝達関数モデルが
あります。これまでに大学の授業などで
伝達関数については触れた事もありますが、
それが結局何の役に立つのかが全然分かって
いませんでした。

今回改めて勉強し直したので、それについて
メモしておきます。

伝達関数とは

制御対象のシステムに与える入力と、その
結果得られる出力の関係を表した関数で、
入出力システムの挙動や安定性を評価する
ためのものです。

このような入出力の関係を表す関数には、
入力信号の種類に関係なく要素固有の関数
となる事が要求されます。
ここで言う要素とは、入力の設定部やセンサ
による検出部、必要な制御入力を作る調節部、
といったものであり、それらは制御要素または
単に要素と呼ばれます。

時間領域とs領域

伝達関数についての理解を難しくさせる
一番のポイントはこれではないでしょうか。
少なくとも自分はこれのせいでチンプンカンプン
でした。

例えば、こちらのようなsin波形やステップ状
波形をシステムの入力として与える場合、

f:id:sy4310:20200427154957p:plain

f:id:sy4310:20200427155026p:plain

入力信号は時間0からある時間tまでの間で
変化するため、それに対する出力信号も
時間0からtまでの間で変化するものになり
ます。

時間領域のまま入力と出力の関係を表す
関数を定義した場合、それは時間の積分の
計算を必要とする面倒な形となって
しまいます。

そのため、元の時間関数をf(t)として、

f:id:sy4310:20200427171459p:plain

のように「時間t=0から∞まで積分する」と
いう数学的加工を施すラプラス変換により、
s領域というシンプルな形で表します。

これにより、例えばこのような入出力システムを
考える場合、

f:id:sy4310:20200427172111p:plain

ラプラス変換を施した際のx(t), y(t), Gの関係は、

f:id:sy4310:20200427172831p:plain

となり、この式中のG(s)が伝達関数と呼ばれます。

時間領域からs領域への変換

時間領域のt関数で表された状態空間モデルを
s領域のs関数で表された伝達関数モデルに変換
するには、こちらの式を用います。

f:id:sy4310:20200427175026p:plain

Y(s)が出力、U(s)が入力、A, B, C, Dは状態空間
モデル内の各行列であり、こちらのように
定義します。

f:id:sy4310:20200427175359p:plain

そして、この状態空間モデルから伝達関数
モデルへの変換は、こちらのような計算で
求める事が出来ます。

f:id:sy4310:20200427180451p:plain

ちなみに、この計算の中に含まれる逆行列の
計算はこちらのようになります。

f:id:sy4310:20200427180858p:plain

伝達関数モデルは1入力1出力を表すものなので、
今回のような多入力多出力の状態空間モデルから
変換した場合は、入力ベクトルの各要素と出力
ベクトルの各要素の組み合わせ毎に伝達関数が
求められる事になります。

Pythonサンプルプログラム

上記の状態空間モデルから伝達関数モデルに
変換するPythonプログラムを作りました。

"""
Conversion sample from state space model
to transfer function model

State equation example
x(t+1) = A * x(t) + B * u(t)
A: 3 x 3 matrix
B: 3 x 2 matrix

Output equation example
y(t) = C * x(t) + D * u(t)
C: 3 x 3 matrix
D: 0

Transfer function example
2-Input 3-Output

author: Shisato Yano (@4310sy)
"""

import numpy as np
from control.matlab import ss, ss2tf

def define_state_space_model(A, B, C, D):
    ss_model = ss(A, B, C, D)
    return ss_model

def convert_transfer_function_model(ss_model):
    tf_model = ss2tf(ss_model)
    return tf_model

def main():
    print("Run " + __file__)

    # define matrix
    A = np.array([[1, 0, 0],
                  [0, 1, 0],
                  [0, 0, 1]])

    B = np.array([[0.05, 0],
                  [0, 0],
                  [0, 0.05]])

    C = np.array([[1, 0, 0],
                  [0, 1, 0],
                  [0, 0, 1]])

    D = 0

    ss_model = define_state_space_model(A, B, C, D)

    tf_model = convert_transfer_function_model(ss_model)

    print('Converted transfer function model')

    print(tf_model)

if __name__ == '__main__':
    main()

実行すると、こちらのように各入出力のペアにおける
伝達関数が計算されます。

f:id:sy4310:20200427184513p:plain

GitHubリポジトリ

今回紹介したサンプルプログラムは、
こちらで公開しています。

github.com

参考資料

www.jeea.or.jp

em.ten-navi.com

www.kairo-nyumon.com