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自動車のABSについての基礎知識と自動運転における導入のメリット

車はなぜ曲がるか?―限界コーナリングのダイナミクス (MECHANISM SERIES)

車はなぜ曲がるか?―限界コーナリングのダイナミクス (MECHANISM SERIES)

  • 作者:三田村 楽三
  • 出版社/メーカー: 山海堂
  • 発売日: 2001/05
  • メディア: 単行本

目次

背景・目的

ここ最近、自動車の自動ブレーキシステムについて考える中で、
タイヤロックによるスリップを低減する装置であるABSについて
学ぶ機会がありました。
勉強する前からどんなものかはざっくり知っているつもりでしたが、
ちゃんと学んでみると誤解している部分がいろいろあったので、
この場で正しい知識をメモしておこうと思います。

自分がしていたABSに対する誤解

ABSに対する自分のイメージは、減速・停車時のブレーキ操作を
適切に制御して、停車するまでの制動距離を出来るだけ短くなる
ようにするシステム、というものでした。
しかしながら、これから後述する事から、制動距離を抑える事が
ABSの主目的ではないという事を知りました。

ABSの概要

ABSについての概要や技術については、下記の記事にて詳しく
紹介されてるので参照下さい。

ja.wikipedia.org

car-rider.jp

これらの記事に書いてある通り、ABSの主目的はブレーキ時の制動距離を
短くする事ではなくて、スリップしやすい路面においてタイヤがロック
しないようにブレーキを調整し、それによってハンドル操作が効くように
するものだというのが分かります。

ABS有無による制動距離の違い

以前にこちらの記事にて、自動車のブレーキの基礎について紹介しました。
基本的にはブレーキを強く踏めば、それに応じて強い制動力が働く訳ですが、
その制動力には限界があり、その限界値が最大静止摩擦力です。
しかしながら、この最大静止摩擦力を越えた制動力が掛かるとタイヤはロック
した状態になり、タイヤ-路面間に生じる摩擦力は動摩擦へと変わります。
こうなるとタイヤは路面上をスリップするようになり、いくらブレーキを強く
踏んでも制動力は大きくならない、むしろ最大値より小さくなってしまいます。

www.eureka-moments-blog.com

ABSの仕事は、ブレーキによる制動力が限界の最大静止摩擦力を越えないように
ブレーキを調整し、タイヤがロックしないようにすることです。こちらの動画で、
ABSが働いている時の挙動が分かりやすく紹介されています。

www.youtube.com

もともとスリップしにくい乾燥路面では、制動力が上手く制御されるABS有の
方が制動距離がある程度は短くなる傾向にあります。ただし、前述した通り
制動距離を短くする事が目的ではないので、かならずこうなるとは限りません。
逆に、水で濡れたり凍結して滑りやすい路面では制動距離が長くなる事もあります。

制動力とスリップ率の関係

スリップしにくくすることでハンドル操作が効きやすくなりますが、そのスリップが
完全に0となるのが理想かというとそういう訳でもありません。なぜそういうことに
なるのか、こちらの記事で詳しく解説されています。

www5f.biglobe.ne.jp

ブレーキによる制動力が発生するには、タイヤの回転速度と路面に対する進行速度の
の間にある程度のずれが生じている必要があり、そのずれがスリップ率になります。
こちらのグラフから分かる通り、スリップ率がある程度増加したところで制動力が
ピークに達しますが、そこから先は逆に低下して制動力が弱くなります。

f:id:sy4310:20191214160754p:plain

これは制動力が最大静止摩擦力を越えて動摩擦力に変わった事を意味しており、
ABSは制動力がピークを越えてしまわないように、スリップ率をコントロール
しているということになります。

自動運転におけるABS導入のメリット

自動運転によって車が走行する際、ABSが関わりそうな場面は下記の3つです。

  • 作成したコースへの追従
  • 進路変更による障害物回避
  • 緊急ブレーキによる衝突回避

これらの場面において、ABSがどれだけ役立ちそうか考えてみます。

作成したコースへの追従

コースに対して高精度に追従するには、ステアリング操舵が効かなければ
いけません。しかし、路面が濡れていたり、凍っていたりして滑りやすい
状態だとステアリングが効かなくなり、目標コースから外れて事故に
繋がる可能性があります。
こういう時にABSが機能すれば、適切なブレーキ操作によりタイヤの
スリップを抑制し、正確なコース追従がしやすくなると考えられます。

進路変更による障害物回避

自動運転中の進路上に障害物となる物体を検出した際は、衝突しないように
進路を変更して衝突を回避する必要があります。このためにはステアリング
による操舵が効く必要がありますが、路面が滑りやすい状態だと進路を変更
変更できずに衝突事故を起こしてしまいます。
こういう時にABSが機能すれば、スリップの抑制によってステアリングを
切って進路を変更し、衝突回避をしやすくなると考えられます。

緊急ブレーキによる衝突回避

障害物との衝突を回避するもう一つの手段として、緊急ブレーキにより
衝突する前に停車する方法があります。この場合、安全距離を保って
停まれるように制動距離をコントロール出来なければいけません。
この場合、制動距離の抑制が目的ではないABSはあまり頼りにはならない
のではないかと考えられます。
乾燥路面であれば少しは制動距離が短くなる事もあるでしょうが、
滑りやすい路面だと逆に伸びてしまう可能性が高いです。このように
滑りやすい路面で緊急ブレーキを機能させるには、ABSとはまた別に
ブレーキを調整する仕組みが必要になりそうです。